時計を楽しむのに知識が必要か?[のたうつ男の苦悩]

01_のたうつ男の苦悩

[のたうつ男の苦悩]では、時計趣味あるあるとか、気付き、たまにちょっとした主張を交えたものを扱います。一覧化された情報とか、お役立ち情報は期待しないでください。このシリーズの内容が、何かしら生活を少し楽しくするものとなれば幸いです。

筆者:佐藤しんいち Twitter:@SugarHeartOne
webChronosを中心に、時計ライターとして活動中。
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時計を番号で呼ばれましても……

 極まった時計オタクもといエンスージアが集まると、モデル名で呼ぶことに加えてRef番号とも呼ばれる型番で呼ばれることが増えます。

 私は技術系の仕事をしているくせに数字に弱く、数字を覚えるのが苦手です。加えてモデル名をはじめ、歴史的な出来事が発生した年や、曲名、人の名前を覚えるのが苦手です。では何を覚えるのが得意なのだ、と怒られそうです。
 幼い頃から、色々な物に興味を示すものの、名前を憶えて「これは〇〇だよ!」などいった、よくある子供の行動をした記憶がありません。名前を覚えるのが苦手だったから現在も苦手なのか、覚えることをしてこなかったから現在も覚える癖が無いのか。因果関係は不明ですけれど、とにかく苦手意識があります。

 そういった「単語や数列を覚えること」で何かできたことはあるだろうか?と思い出してみると、昔仕事で関わっていた電気回路のICの型番はそれなりに覚えていたように思います。その違いは何なのでしょう。

 仕事で関わると毎日のように目に入ります。また、その数列や追番の違いにも着目します。間違ってしまうと大問題になったりしますから真剣です。そもそも嫌いではないですから興味も持っていると言えます。

 この観点から述べれば、時計のRef番号が覚えられないということは、この逆の状態であると言えるでしょう。「仕事として取り組んでいるのだから、毎日のように、真剣に、興味を持って接しろよ」と言われそうですが、その通りですね……。

 また、Ref番号をしっかりと覚えている人は、常日頃から興味を持って情報を収集し、真剣に向き合っていると言えるでしょう。

時計いろいろ。楽しみ方もいろいろ

 世の中にはすごい人がいて、時計をパッと見て「おぉ!Ref.XXXXXXXじゃないですか!」と言える人がいます。しかもツイッターにはそういう人がゴロゴロいたりして、自分の時計好きレベルは低いと思う人もおられるのでは?と考えています。

 そういったある種の負い目?があると、時計に関する番号や数字を覚えようと「勉強」する人もおられることでしょう。そのような取り組みは趣味として悪くない(否定するものでは無い)です。ただ、覚えていないことを「劣ることである」とは思う必要が無いと考えています。

 時計の楽しみを自分なりに分解しますと、以下の5つに分類されるのではないでしょうか?

・知って楽しむ
・見て楽しむ
・触って楽しむ
・着用して楽しむ
・収集して楽しむ
・愛用して楽しむ

 このなかで、知って楽しむことと見て楽しむことは「基本無料」というやつです。さらに知りたい、さらに見たいと考えると資料を買ったり、遠方へ出かけたりして課金が必要となります。

 触る、着用する、収拾する、愛用することは、基本的に有料コンテンツです。触るだけなら店頭やオフ会などで機会が得られるかもしれませんけど、心ゆくまで楽しむのは難しそうです。

見て楽しんで感性を磨きたい

 人それぞれ、これらのバランスは異なります。正解はありません。私には予算が無いので後半4つの割合は少なくなりがちです。個人的には「見て楽しむ」を重視したいです。その理由は、時計は「物」であり、その「物」を実現するために努力が注がれているのだから、物を楽しむのなら知るよりも見ることを重視したいと考えるためです。

 また、知っていることは重要ですが「あぁこれは知っている」と慢心すると、見ることで得られる情報を遮断してしまう可能性があります。最強なのは「見て得られる情報を可能な限り拾い取って、持っている知識と比較しながら、さらに見て得られる情報を深める」といったところでしょう。仕様が今ほど明確に定まっていないヴィンテージの世界では、このような楽しみ方が威力を発揮することでしょう。

 ですので、無理にRef番号を覚えるのではなく、見る能力と言いますか、感性を磨いてゆけば良いでしょう。そうすれば、有名ではなく、安価な時計であっても光る物を感じ取ることができるようになるかもしれません。

 私は時計業界の端っこに関わらせていただいております身なので、番号の類も覚えるのは業務の内ではあります。ただ、それがどうにも苦手なのであれば、物を見る感性だけは磨いてゆきたいな、と思っております。

※おまけ
 楽しみ方には他にもあって「引き継いで楽しむ」「修理して楽しむ」「作って楽しむ」というのがあります。受け継げるだけの体力のある時計(機械、ケース、補修体制が優れている方が体力がある)であることや、信頼して引き継げる相手が居ることも重要ですね。修理したり作って楽しむのは、結構レベルが高いですが、好きな人は言われずともチャレンジしているでしょうね。

 

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