筆者佐藤しんいちがwebChronosで担当したインプレッション記事のこぼれ話をするコーナーです。「webChronos用に」とお貸しいただいている時計ですので、こちらでは元記事を超えるような情報や、元記事を覆したりすることはございません。あくまで補完する内容、思い出などを残しておく程度となります。
元記事
筆者:佐藤しんいち Twitter:@SugarHeartOne webChronosを中心に、時計ライターとして活動しています。 自己紹介 過去の担当記事一覧 |
ペキニエ「リュー ロワイヤル キャトル・フォンクション ファントム D2011 クールブラック」
ペキニエはフランスのマニュファクチュールです。自社開発ムーブメントとして「カリブル ロワイヤル」があります。カリブル ロワイヤルは、多機能化を前提とした構造を持っており、シンプルなモデルから今回の4つの機能(キャトル・フォンクション)を持つモデルなど様々です。2022年時点では、三針の「カリブル イニシャル」を追加しましたので、多機能モデルと三針モデルとムーブメントの住み分けが進んでゆきそうです。
「多機能化」と言うとモジュール組み込みによる機能追加をイメージしがちですが、カリブル ロワイヤルはちょっと違う。このあたりの設計思想については元記事に書いてありますのでご覧ください。
インプレッションの思い出
このインプレッション記事は「佐藤しんいち」の名前が出た初めての記事でしたし、まとめるべき内容が渡されるニュース記事と違う『自分で内容(構成)を立案して採用してもらう』初めての記事でした。
商用記事でない、個人サイトに掲載するレベルでも、ここまで内容を考えたり、情報の裏付けを取ったりした経験が無く、しかも、言っては悪いですがマイナーかつ渋いチョイスで努力が必要でした。
なぜペキニエをインプレッションすることになったか?という経緯を書き残しておきましょう。
筆者はwebChronosにて「時計データベース」を担当しており、この中でペキニエが記事作成の候補となっていたので、ペキニエについて調べたことがありました。そこで、独自性を持ちつつ真面目にムーブメント開発と製作を行っている点に興味を持っていました。
そして、そのタイミングで、とある店舗でペキニエのイベントが行われていることを知り、ちょっと無理して伺ったのを覚えています。その時が「時計ライターなのですが……」という話をした最初だったかもしれません。
そのイベントには、ペキニエ日本輸入総代理店のカリブルヴァンティアンの担当者さんが来られていました。後で知ったのですが、実はそのタイミングで今回のインプレッションを行った個体を触っていたんですよね。
そんなこともあって、ペキニエに興味を持っていた筆者は、クロノス編集部に伺った際にその旨を伝えたところ、インプレッションをするに至った、という経緯がありました。
ちなみに、TS-HORIUCHIさんがペキニエを熱心に紹介しているので、興味がある方は是非、足を運んでみてください。
インプレッションのこぼれ話
『初めての記事』だったので、きちんとしたインプレッション用写真を撮るのも初めてでした。なので『どういう点を注意すべきか?』も分かっていませんでした。今見直すと撮り直ししたくなるなぁ……。
さて、手に取って印象的だったのは『時計の動き出しの軽さ』です。少し巻き上げてやると直ちに動き出すのです。テストしたくて可能な限りパワリザを使い切った状態だったのですが、それでも動き出しが軽いのは、カリブル ロワイヤルの設計思想であるフリクションロスの低減の効果では?と感じました。
また、リュウズ操作が軽いのも印象的でした。これもおそらく、機構の効率が良いことが効いているのでしょう。ただ、正確な時刻合わせをしようとすると少々シビアに感じることもあったので、リュウズ周りのOリングやグリスで少し『しっとり』方向にチューニングしても良いのかも。現在のモデルでは改善されている可能性はあります。
デイデイトの調整は軽快ながら明確で、操作感がなかなか良かったです。この点も印象的でした。
ダイアルの見栄えは悪くないのですが、超良い!という訳でもなく、コストのかなりの部分がムーブメントに注がれていると考えて良いでしょう。独自性のある「センター・シャフト・ドライブ」を理解し、デイデイト、ムーンフェイズなどの伝統的な「高価な腕時計の機能」を楽しむことができれば、魅力的な選択肢のひとつとなることでしょう。